平岡海月さんの「黄色いワンピースの紀行文」

日向坂46

2024年6月13日の平岡海月さんのブログ

平岡海月さんの「黄色いワンピースの紀行文」

本日次のブログは平岡海月さんです。



黄色いワンピースの紀行文

https://www.hinatazaka46.com/s/official/diary/detail/56217?ima=0000&cd=member

ブログの概要

平岡海月ブログ49ページ目を開いてくださりありがとうございます📖

完全遮光の日傘が雨の日に手元を離れて行きました。

厳密に言えば、電車に置き去りにしてしまったので私が傘から離れました。

改札口へ続くエスカレーターに乗っている時、傘を忘れてきた事に気づくより先に焦燥感が込み上げて来ました。

たとえば、1時間以上集中しなければ終わらない大きめの宿題の存在を、提出当日の朝思い出した時のような取り返しのつかない焦りみたいな。

その時点で手元に返ってこないだろうとこれまでの経験を元にそう考えていたと思います。

一応ホームを降りてすぐ確認してもらいましたが案の定見当たらずすぐに諦めました。

雨がしきりに降るジメジメした夕方、もとより軽くなかった気持ちはさらに沈み、改札が完全な諦めの区切りになるような感じがしてほんの少し改札の外へ出ることを躊躇いました。

私はビニール傘を買うことに抵抗があります。その場しのぎのものを増やしたくないので本当に必要ならその場で向こう1年は気に入って使えそうなものを探します。

でもその日は駅構内で買えるビニール傘を買わないとびしょ濡れになりそうだったのでビニール傘を久しぶりに買いました。

普段雨晴兼用の傘を使うので、いつも傘の影は真っ黒なのですが、ビニール傘の影は透明で私のシルエットと傘の細い骨だけが黒くはっきりとしていました。

それに目が落ちた時、心に隙間風が吹いた感じがしました。なんだかすこしスースーする感じ。

どこかへ行ってしまった(厳密に言えば私がどこかに行かせてしまった)あの傘は2年くらいお世話になった傘でした。

遮光の黒いコーティングが所々小さな点で剥げていたのですが、調子の良い太陽の下でその真っ黒な傘を広げると剥げた点が星みたいになっていて綺麗でした。街頭の少ない地元の夜空を思い出すので、気づいたら真っ黒な傘の中で上を見上げるのが癖になっていました。

これからもっと星が増えて満天になっていく様子を眩しさを感じるまで見届けようと思っていたので悲しかったです。

星のせいで完全遮光の性能は失われていたんですけどね。

"私だけの星空アンブレラ"を無くし、心に隙間風を通している私はこのままじゃ今日を終われないと思って高円寺を目指しました。

「一目惚れの古着を見つけるまで帰れません」

めちゃくちゃいいやん!!!!

となったので決行です。

この1人企画が決定してからは足取りは軽く、ビニール傘を握りしめていくつかのお店を回りました。

しかし掲げたタイトルに入れた「一目惚れ」のワードが仇となり、可愛いと思っても少し悩む時点でこれは一目惚れじゃない。と変なところで頑固な性格が出てしまいなかなか購入に至りません。

そんな頑固を繰り返していくうちにもともと薄暗い空がさらに暗くなり始めました。最近は日が長くなっているから暗くなった時にはもう結構な時間です。

もう無理か。最初に可愛いと思った洋服を買って帰るかと諦めかけていた矢先に、黄色いワンピースが目に留まりました。

その数日前に梶井基次郎先生の『檸檬』を読んでいたので檸檬色でなくても黄色がとても嬉しく感じてしまいました。

なんならもう黄色いだけで良かったのに、柄もちゃんと可愛かったから文字通り一目惚れでした。

そのワンピースを1枚購入して直ぐに帰りました。

完全に日が落ちた本物の夜空をビニール傘越しに見上げても、星は1つも見つけられませんでした。

岸政彦さんの『ビニール傘』という小説を過去に読んだことがあります。

薄暗い景色の中で雨がしとしと降り続けているような静けさを伴う小説だった記憶があります。

ビニール傘を買ったからもう1回読み返そ☂️

今日はこの辺で!

最後まで目を通してくださりありがとうございます。

平岡海月

引用元:平岡海月さんの「黄色いワンピースの紀行文」